ふるさと創菓処　扇松堂　「いと、お菓子！」

９月講座のご案内
　処暑、そろそろ暑さ納め。昼夜の気温差が大きくなり、朝夕には空気が冷やされて露を結び、陽が昇ると同時に、辺りに満ちていた草木や土の匂いと伴に消える様を「白露」。儚さを感じる秋の入り口が恋しいです。
９日は「重陽」、２４日が「十五夜」本格的な秋を楽しむ行事が続きます。ワレモコウやエノコログサ、ツリガネニンジン。コオロギやスズムシ、カネタタキの奏でる秋の音色。五感を使って、野山で一日をゆったりと楽しむ素材がいっぱいです。

はりはら塾

焼き芋饅頭

秋は滋味の季節。稲穂は黄金色に輝き、秋野菜が収穫の時を告げる…。こんな季節を代表するお菓子の素材といえば、サツマイモといえるでしょう。最近は、美容、健康食品として脚光を浴び、さまざまなお菓子に利用されています。ひと昔前の”代用食”のイメージからは想像もつかない変身ぶりです。素材としてはどこか野暮ったいイメージがありましたが最近、健康への関心の高まりとともに見直され、プディングやパイなど、従来とはひと味違うセンスのお菓子が創られるようになっています。
サツマイモは甘いイモなので甘藷（かんしょ）ともいい、中央アメリカ原産。日本へは江戸時代に中国から沖縄をへて、九州（薩摩）へ渡来しました。そして、飢饉を救う救荒作物として注目され、蘭学者、青木昆陽などが栽培を奨励したことから、日本各地で普及。以来、主食の補いとして、日本人の食料難を救ってきました。また、ビタミンＣが豊富で、この約６割は加熱しても壊れずに残ります。食物繊維が多く、さらに不消化性炭水化物も含まれているため、腸の活動を刺激して便秘を予防し、コレステロール値を下げる。つまり、体のクリーンアップに最道な食品といわれています。
埼玉県の川越が産地として有名で、ちょうど江戸から十三里あったため”栗より（九里プラス四里）うまい十三里”のキャッチフレーズで名をあげました。栗とは異なるホクホクした甘味を実にうまく表現したもので、川越イモというよりも、サツマイモそのもののキャッチフレーズのようにいたるところで使われてきました。栗に比べると手軽に手に入り、扱いやすく、おやつ、お菓子の素材として万人に愛されてきたサツマイモ。秋風が立ち、日に日に肌寒くなるこれからがおいしくなる季節です。




本練り栗羊羹


練り羊羹が初めて世に出たのは、天正１７(1589)年春、太閤秀吉が京都聚楽第に諸国大名を招いた際に、練り羊羹を自慢した時だといわれます。これは、寬正２年(1461)京都伏見に創業した「鶴屋」が、奈良朝からの貢ぎ物の「凝藻菜(こるもは)」を利用し、生臙脂で紅色を着けた練り羊羹だったそうです。この後「鶴屋」は元和５年(1619)に紀州徳川藩誤用菓子司として和歌山に「駿河屋」の看板を掲げます。加賀藩城下のカネト屋中左衛門も、鶴屋に後れること３９年、寛永３年(1626)に練り羊羹を完成させ、藩主の出府に合わせて江戸に上り「藤村」を名乗ることになります。どちらも現代では羊羹の名店として知られています。
驚くべきは、寒天の製法が発明されていない(寒天の製法発明は１６５８年)時代に、練り羊羹の製法が確立していることです。「凝藻菜(こるもは)」は、テングサの煮汁を固めたもので、腐りやすいナマモノですが、テングサそのものを煮て使用したと考えられます。
練り羊羹が流行り始めた安永３年(1775)には、乾物の寒天が流通していたと思われます。これ以降、各地で様々に羊羹は研究され、地方の銘菓や季節の味として親しまれています。
練り羊羹は、通年で生菓子として販売される「朝生羊羹」、主に夏場に販売される「水ようかん」、どっしりとした濃厚な食感の「本練り羊羹」に大きく分類されます。配合や練り上げの塩梅によってお好みの味を自分で作れるのも楽しみのひとつです。
秋！　栗！　栗羊羹！　どっしりとしたキングオブ羊羹です！





県営吉田公園緑化大学

お題「初秋」



「重陽・初紅葉」　練り切り製　　本練り栗羊羹